電子線照射用試料 (β-LiAl) の 育成とその電気的特性の測定 矢萩・橋本研究室 工 E11002 阿部 信介
目的 β-LiAl の結晶を育成するための電気炉を製 作する。 今まで使用してきた電気炉の改良を行う。 電子線照射実験で使用する β-LiAl の結晶を 育成し、結晶の電気的特性を測定する。
電子線照射実験とは β-LiAl の結晶に電子線を照射して格子 欠陥を意図的に作り出しながら、電 気抵抗率を測定して、特性の変化を 計測する実験である 。
Li Al β-LiAl の構造図(二次元) 格子欠陥とは
Li Al Li 原子空孔 V Li
置換型格子欠陥 Li Al Li Al
Li Al V Li ー Li Al 複合型格子欠陥
三種類が 混在 Li 原子空孔が多い 置換型格子欠陥 が多い
電子線を複合型 格子欠陥の Li Al に 照射する。 実験のねらい e-e-
Li Al がはじき飛ばされて Al 原子空孔 (V Al ) が出来る。 V Al
実験の流れ 1. 結晶育成用電気炉の製作 2. 旧来の電気炉の改良 3. β- LiAl の X 線回折を行う 4. β- LiAl の電気抵抗率の測定を行う
電気炉の製作 今までの真空装置では真空度が良く ないので β-LiAl の結晶を作ることが 出来なかったため、新しい電気炉を 製作する。
製作した電気炉
旧来の電気炉の改良 今まで使用してきた電気炉は真空度が悪く、 Ar ガスが古い物なので、新しい真空ポンプ を取り付け、 Ar ガスを新しい物にした。
結晶の育成 Li と Al が、 1:1 になるように計量する。 Ta 製の坩堝に入れ、電気炉内にセットし た後、真空装置内に電気炉をセットする。 真空装置内を真空に引いた後、 Ar ガスを入 れる。 温度コントローラに温度プログラムを組ん で、そのプログラムで結晶を育成する。
温度プログラム
育成した結晶
試料の特性測定 ■ X 線回折 X 線回折装置にスライスした結晶か粉末状にし た結晶をセットして実験を行う。 X 線回折では、回折線の回折角から格子定数が 解る。 ■ 電気抵抗率の測定 電気抵抗率は Van der Pauw 法を用いて測定を 行う。この方法を用いれば結晶の形状に影響 されずに測定することが出来る。 真空に引いた装置内を 9K 近くまで冷却した後、 徐々に温度を上げていきながら測定する。
X 線回折 結晶に X 線を照射すると、反射されるが、位 相が合わないと打ち消し合って反射波が観 測されない。位相が合えば反射波が観測さ れる。位相が合うと言うことは、その分の 行路差が生まれるわけで、行路差はブラッ グの式で求められる。 θ θ d θθ dsinθ 等距離の原子面による Bragg の X 線反射
X 線の波長が解っているので、ブラッグの式 から、面間隔 d を求めることが出来る。 d が求められたら ASTM カードからミラー指数 ( hkl ) を求めて、格子定数を求める以下の式に代入する。
出力した波形
測定結果 番号 Li 濃度 [%] 格子定数 [ Å ] LiAl LiAl LiAl LiAl
測定結果
電気抵抗率の測定 時間が足りず、電気抵抗率の測定ま でには至らなかった。
実験結果 新しく製作した電気炉では結晶が噴出してし まいうまく結晶を作ることが出来なかった。 改良した電気炉では結晶が噴出することもな く、金属光沢のある綺麗な結晶が育成できた。 X線回折より、 Li 濃度が高くなると格子定数 が大きくなることが確認できた。 電気抵抗率の測定が出来なかったので、今後 の課題としたい。